退去費用・原状回復費用などに関する最高裁判所の判例

2020年4月1日以降の改正民法の条(抜粋)
 
最高裁判所の判例

(1)最高裁判所第一小法廷平成10年9月3日判決・ 民集 第52巻6号1467頁

居住用の家屋の賃貸借における敷金につき、賃貸借契約終了時にそのうちの一定金額又は一定割合の金員を返還しない旨のいわゆる敷引特約がされた場合であっても、災害により家屋が滅失して賃貸借契約が終了したときは、特段の事情がない限り、右特約を適用することはできない。
 

(2)最高裁判所第二小法廷平成17年12月16日判決・集民 第218号1239頁

1 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには,賃借人が補修費用を負担することになる上記損耗の範囲につき,賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識して,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。

2 建物賃貸借契約書の原状回復に関する条項には,賃借人が補修費用を負担することになる賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗の範囲が具体的に明記されておらず,同条項において引用する修繕費負担区分表の賃借人が補修費用を負担する補修対象部分の記載は,上記損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず,賃貸人が行った入居説明会における原状回復に関する説明でも,上記の範囲を明らかにする説明はなかったという事情の下においては,賃借人が上記損耗について原状回復義務を負う旨の特約が成立しているとはいえない。


 

(3) 最高裁判所第一小法廷 平成23年3月24日判決・ 民集 第65巻2号903頁

1 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできないが,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものであるときは,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となる。

2 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,賃貸借契約締結から明渡しまでの経過期間に応じて18万円ないし34万円のいわゆる敷引金を保証金から控除するというもので,上記敷引金の額が賃料月額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていること,賃借人が,上記賃貸借契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには,礼金等の一時金を支払う義務を負っていないことなど判示の事実関係の下では,上記敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず,消費者契約法10条により無効であるということはできない。
 

(4)最高裁判所第二小法廷平成23年7月15日判決・民集 第65巻5号2269頁

1 消費者契約法10条は,憲法29条1項に違反しない。
2 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
 
 
改正民法の条文(2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約に適用)

(賃貸人による修繕等)
第606条
1.賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2.賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

(賃借人による修繕)
第607条の2
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。

(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第611条
1.賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2.賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。


(賃借人の原状回復義務)
第621条
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。





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